「ここが、セラード国……」

 列車から降りてみると、そこは今までに見たことがないような賑やかな街だった。
 大きくてドーム型の建物がたくさん並んでいて、屋根は赤みがかったような色をしている。
 細やかで繊細な模様の壁に、細長い窓がいくつも並んでいた。

「すごい……!」
「やはり、セラード国のジェラルツェの街並みは美しいな」

 殿下は周りを見渡してじっくりと観察している。

「で……ニコラ様は来たことがあるのですか?」
「ああ、仕事で何度か来た。人柄も明るくて好きなんだ」

 街を歩いている人に目を向けると、すらりと綺麗な人々が多い。
 そんな中でマーケットのような市場が開かれており、子どもも数人走り回っている。

「アリス、ホテルに行こうか」
「……へ?」

 聞き間違いだろうか、今なんかすごいお誘いを受けたような……。
 私は信じられないものを見る目で殿下を見つめる。
 すると、殿下は手を左右に振って否定した。

「さすがにそう意味で誘わない、今は」
「今は……?」