「ほら、殿下っていうとバレるから。ニコラって呼んで」
「で、でもっ! さすがにそれはっ!!」
「お願い」

 そう言って片目を閉じてお茶目な表情を見せながら両手を合わせて私にお願いをする。
 ずるい……そんな可愛い顔されたら、断ることなんてできないじゃないですか……。
 私は意を決して、それでも少し遠慮がちに呼んでみる。

「ニ、ニコラ……様……」
「様は余計だけど、まあ仕方ないかな。さあ、冷めないうちにいただこう。毒見は大丈夫だから」
「わ、わかりました。何かあればいつでも言ってくださいね?」
「ありがとう、アリス」

 殿下のお名前を呼ぶことになるなんて……。
 これから大丈夫かな?

 そう不安に思いながら料理をいただくために、カトラリーを持ってみる。
 妃教育でマナー勉強はしてるけど、ご当地ものの食材を使った料理などは初めてだからきちんと食べられるか少し不安だわ。

「やはりこの地方のトマトは実が小さい変わりに甘いな」

 殿下の言葉を聞いて私もじっくりと並べられた料理を見てみる。