私の手を引きながら殿下は食堂へと向かう。
 彼に連れられながら車両を移動して食堂車にたどり着くと、正装をした男性がドアを開けてくれ、私を迎えてくれる。
 テーブルに案内されると、そこには普段あまり食べないような高級そうな前菜、スープが運ばれてきた。
 とっても美味しそう……。
 私は喉を鳴らして、その素敵な料理を目と香り楽しむ。
 思わず料理に目を奪われた私は、はっと気づいて殿下のほうを伺うと、彼は頬杖をついて嬉しそうに私を見ているではないか。

「すみません、お腹が空いていたので、ついお料理に目が……」
「ああ、私もお腹が空いた。でも、料理よりも料理を見つめるアリスの表情の方が可愛い」

 私をからかうようにそう言った殿下は「いただこうか」と言って料理に手を付けた。
 そんな殿下に私は慌てて、でも周りに聞こえないように小さな声で言う。

「殿下、毒見は私が」

 すると、殿下はにこっと微笑むと、そのまま料理を口にした。

「殿下っ!」

 声が大きくなってしまった私はすぐさま口元に手を覆って、殿下に近づいて小声で話そうとする。
 しかし、先に話しかけたのは殿下のほうだった。