「う……ん……」

 昨日の夜から本とんど眠っていなかった私はあたたかい日差しで目を覚ました。

「おはよう、アリス」
「ふえ……?」

 テーブルに突っ伏して寝ていた私の顔を覗き込むように、ニコラ殿下の顔があった。

「で、殿下!?」
「ふふ、いい夢を見れたかい?」

 見目麗しい殿下の顔が目の前にある驚きと、寝顔を見られてしまった恥ずかしさで私はさっと顔を隠す。
 そんな私の腕を掴んでぐいっと自らに引き寄せると、私と殿下の顔がとても近づく。

「で、殿下。その、恥ずかしいので離していただければ……」
「い・や・だ」
「わ、私を食べても美味しくありませんよ!?」
「私は魔物か何かかい? それにアリスを食べたりしないよ。今は、ね」

 意地悪そうな顔をした殿下が私の腕をさらに引き寄せて、ちゅっと音を立てながら私の頬に唇をつける。

「なっ!」
「ふふ、テーブルの跡がついてるアリスも可愛い」

 その声を聞き私は青ざめながら自分の頬に手をやった。

「嘘だよ。さあ、さっき車掌さんが食事の準備ができたからと呼んでくれたんだ。一緒に行こうか」