すぐお父様は朝ごはん食べずにお仕事行っちゃうから!
 絶対だよ!!

                           アリス』

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 アリスからの手紙を閉じたジョセフは天井を見上げて息を吐く。
 そうしてこみあげる気持ちを押し込めると、大事に封筒に手紙を入れてテーブルに手をついた。

「アリス、嫁にいく時のような手紙はやめてくれ」

 そうして呟いたジョセフは、棚に飾ってあった指輪を見つめる。

「久々につけるよ、お前と揃いの指輪」

 それは妻のミレーヌとの結婚指輪だった。
 一緒に着けてほしいとせがまれたが、若い時のジョセフは拒んだ。

「綺麗なままだな」

 傷つくのが怖くてずっとつけられずにいた結婚指輪をつけて、上の階へと向かう。

 眠るように静かに息を引き取ったミレーヌの頬を撫でる。

「何も、結婚して25周年という記念の日に逝かなくてもいいじゃないか……」

 声を震わせながらゆっくりとミレーヌの髪を撫でて呟く。

「あいつの無事を祈っていてくれ、ミレーヌ」