「さてと。華ちゃん今日はね。まず私の昔話を聞いてくれる?」

それは大橋さんが30代のときの話だった。

私がちょうど入社したくらいのときだ。

当時大橋さんは家事に仕事に子育てにとても忙しい人だと思っていたのを覚えている。

そんな時に同窓会に行った大橋さんは学生時代には何とも思っていなかった人に興味を持ったらしい。

話も上手でとても楽しくて何より女性として扱ってくれたのだとか。

連絡先を交換し、連絡を取るようになり

子供のこと仕事の悩み旦那さんのこと

いろんな話を聞いてもらっていたようだ。

相手の男性はバツ1で息子さんが1人いたらしい。

お互い相談し合って励まし合っていたのだとか。

お互い言葉にして伝えてはいなかったものの

惹かれあっていたのは分かっていたらしい。

「ある日彼から言われたの。子供と一緒に来ないかって。その言葉で今まで夢見てたって気づいたの。
子供が成人するまでこのままではダメかと聞いた。彼は苦笑いして、長いなぁって。都合のいいことを言ってるのは分かってた。でも子供を巻き込みたくなかった。大人の都合に。それから彼とは連絡することも会うこともなくなった。」

大橋さん自身そういう経験があったからこそ

私の斉木さんに対する気持ちも隠していてもバレバレだったのだろう。