ついに。
 ついにやってきた。
 エイプリルフール。4月1日。今日が。
 先輩にー、告白する日。
「行ってきません!」
「ふふっ、エイプリルフール楽しんじゃってる」
 お母さんに笑われて、家を出た。

「桃姫、おはよ」
「先輩、おはようございます!」
 ドキドキ。
 どどどどうしよう、告白のことしか頭にない!
 この心臓の音、聞こえてないと良いけど……。
「あのさ、今日、人多いね」
「はい」
 先輩の言うとおり、人が少ない。
「だから、秘密、話せなさそう」
「そうですね。私今から話しません!」
 な、なんかややこしや……。
 今から話すって言いたかったんだけど……伝わった?
「そっか。じゃあ、聞かせてもらわない」
 聞かせてもらうってことか。
 今から、私の大告白!
「私ー」
「ストップ」
 なぜか先輩にさえぎられる。
「な、なんでですかっ」
 私なんかした⁉︎
「僕が言ってって言ったくせに、やっぱり僕から言わせてもらって良い?」
「は、はい……って、いいえ」
「良かった」
 先輩は微笑むと、口を開いた。
「僕、桃姫のこと、嫌いなんだ。一人の女の子として」
 私のこと、き、ら、い……?
 で、でも待って。今日、エイプリルフールだから……。
 バッと口元を覆う。
「逆の意味に、受け取ってくれた?」
 こくこくとうなずく。
 つまり、先輩、私のことー?
「私も、先輩のこと、嫌いです。一人の男の子として」
 すらすらと出てきた言葉。
「逆の意味です」
 一応つけたす。
「え……、……うわ、マジで嬉しい」
 喜びを噛み締めている様子の先輩。
「俺だけが好きなんだと思ってた」
 その表情が、かっこいい。
「でも、先輩こそ、そういうそぶり1つも……」
「まあそうだけど、頑張って伝えてた。ずっと、素直になれなかったから」
 素直になれなかった、エイプリルフール……なんか、良い。
 嘘つかないだけで素直なんて嘘だ。
 だって、嘘をついたことがなくても、私、素直になれなかったんだから。