カレンダーを見て、覚悟を決める。
 ちょうど昨日、エイプリルフールに告白すると決めたばっかり。でも、それでも、恥ずかしいし勇気がいる。
 そして今日は……、三月三十日。
 今日はエイプリルフールの、前日。
 エイプリルフールで一回も嘘をついたことがない私だけど、今回は嘘をつくんだ……。
 エイプリルフールで、友達に「嘘ついてる?」って言われたとき、「ついてない」って素直に答えたら「素直」って返された。
 何でエイプリルフールに嘘をつかないのが素直なんだろうか。
 今だに謎だ。
 そんなことは置いといて、私、明日、告白するんだ……。
 まだ実感わかない。
 じ、実感わいても困るけど……あはは。
 ら、来年でも良いかな……?
 って、先延ばしダメ!
 だって先輩は中3。
 来年は、もう高1の年齢だもの!
 もう会えなくなっちゃうから、今のうちに気持ちを伝えなくちゃ。
 後悔しないように。
 鞄を掴んで家を出る。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい、桃姫」
 お母さんが言ってくれた言葉を背中で聞きながら、走る。
 ダメなことだけど、授業中出さないからと言う言い訳で携帯を持っていく。
 朝日がまぶしい。
 目を細めながら、長い長い坂を上る。
 き、きついっ!
 でも、頑張る!
 力を振り絞り、上りきる。
 そして、信号を携帯をいじりながら待ち、体力温存する。
 信号を渡り、軽い下り坂を下ると、学校の門が見えた。
 携帯を鞄のポケットの中のポケットに厳重に保管して、門に走った。
「あ、桃姫」
「え、あわわわわわ!」
 急に目の前の現れた大きな手に私は叫んで転びかける。
「あ、危ないっ!」
 目の前の人物に支えられ、私は転ぶのを回避。
「あ、ありがとうございます」
 誰だろう。
「桃姫、ごめん。びっくりさせちゃったね」
 えっ⁉︎
 そこには、学校のアイドル、勇気先輩が!
「せっ、先輩!」
「久しぶり。早いんだね」
「は、はい」
 って、私、先輩に抱きかかえられてる⁉︎
「きゃーっ」
 誰かが叫ぶ。
「あの、もう大丈夫です」
「そっか」
 そう言って離してくれた先輩を見ながら、高鳴る心臓をおさえる。
 高鳴っているのは、先輩が近いから、恥ずかしがってときめいているんだ。
「おはよう、桃姫」
 先輩は、そんな私にむかって、綺麗な笑顔を見せてきた。
 私は、もうときめきすぎて、一瞬記憶が飛んだ。