う、嬉しい!
 私は携帯を胸に抱えて、目を輝かせる。
『携帯持ってる?連絡先交換しない?』
 ぜひってうなずいた自分の勇気がすごいと思う。
ーピロンッ
〈電話して良い?〉
 えっ、急に電話⁉︎
 先輩からの急な連絡に戸惑いながらゆっくり〈いいです〉と送る。
ープルルッ、プルルッ
 びっくりしたけど、落ち着いて電話に出た。
『もしもし?』
 低い落ち着く声に私はほっとした。
「もしもし、私です」
『あ、桃姫?』
「と、桃姫?」
 急に呼び捨て?
『嫌?』
「い、嫌な訳ではっ……」
 むしろ嬉しい。
 ただ、恥ずかしいだけ。
『そう?と、桃姫……、こ、声だけでもお、落ちつ、く……からっ』
「ん?声だけでもつくから?」
 なんて言った……?
『ななな、何でもないっ!』
「そ、そうですか?せ、先輩も、顔は見てないけど、か、かかかっこい、……」
 ああもう、カッコいいって伝えたかったのに、噛みまくった!
 さっきの先輩みたい……。
『ん?かっこう?』
「な、何もないです」
 あんな恥ずかしいやつ、もう言うの無理っ!
 さっきの私の勇気すごい!自分で言うけどっ!そして今日2回目だし!
「あの、先輩、エイプリルフールで、嘘言うの、私も楽しみなんです」
『え?そうなんだね。僕と一緒だね』
 先輩と一緒ということにドキッと胸が高鳴る。
「は、はいっ」
 先輩と、一緒……。
 電話を切った後も、まだ胸の高鳴りがおさえられなかった。
 下手にこの気持ちを打ち明けても、今の関係が崩れるだけだ。
 だから、この気持ちは胸に秘めておこう。
 そうやって思っていたけど、今どうしても伝えたいと思う自分がいる。
 先輩が言われたことを逆に受け取るなら、嘘で告白できるかもしれないから。
 それに、近づくだけで良いって思ってたのに、今はずっとそばにいて独り占めしたいと思っている。
 人は、どんどん欲張りになってくっていうの、本当なんだな。
 私、決めた。
 エイプリルフールにこそ、素直になる。