秋斗くんと春陽くん、どちらも救う手段。

はるくんのお母さんが伝えたその治療法は、同じ魂を持つ――『共依存病』の患者であるはるくんの状況をもとにしたものだった。
はるくんの生きた証が、秋斗くんと春陽くんを救っている。

小さな……けれど、確かな奇跡。
それも全て、秋斗くんと春陽くんが痛みと願いの果てに辿り着いたものだ。

二人で一人。
いつまでも変わらない彼らの生き様が息苦しいほど眩しくて、どこまでも胸に鳴り響く。

余命宣告された日を乗り越えて、今日も話せることが嬉しくて、私の胸は音を立てて高鳴る。
でも……これから先の未来は、どこまでも不透明で不確かだ。

求めて。求めて。求めた先。
どんなに足掻いても報われずに終わる可能性もある。
けれど、それと同じだけ希望もあるはずだ。

秋斗くんが春陽くんとともに、これからも一緒に生きていく。

そんな未来だって無限の可能性の中には存在する。

『しずちゃん、いくらでも悩めばいい。ただその後、しっかり前さえ向ければ』

はるくんが教えてくれた。
前を向くということは――。
決して、目を閉じてしまうことじゃない。
耳を塞いでしまうことでもない。
前を向くということは……一緒に歩いていくこと……。
思い出の向こうにある、新しい出会いのために――。

過去は未来よりも遠い。
どこよりもはるかに遠い場所で、どれほど手を伸ばしても届くことはない。
けど、過ぎ去った時間の中で、はるくんが紡いでくれたものが、私たちの生きる今をつくっている。
見えなくても、触れられなくても、会えなくても、繋がっているのだ。


――あの春の先で待つあなたへ、と。