春の青空、風がそよぐ木々の桜、目に映るもののひとつひとつがまばゆく輝いている。
季節は巡り、私たちは高校二年生になっていた。
出会いと別れ。
その嬉しさと悲しさを知った私たちは今――。

「今日はあきくんの日かなー。それとも、はるくんの日かなー」
「ううーん。私もまだ、分からないんだよね」

優しい春の風が吹く。
桜の見頃で騒々しい公園は心地良い。
私とねねちゃんは以前、訪れた海沿いに広がる大きな公園――海浜公園に赴いていた。

「でも、きっと……」
「きっと、なになに?」

思った以上に食いつかれてしまった。
私は苦笑して、噛みしめるように声に出す。

「今、こちらに向かって走っている人かな」
「あ……」

私とねねちゃんは身体の火照りを振り払うように、表情を華やかせる。
舞い散る桜。心を奪われたのは走る姿だった。
私たちはずっと、大好きな彼のことを目で追っていた。

「篠宮さん、鳴海さん」

やがて、彼は――秋斗くんは私たちのもとに駆け寄ってきた。
秋斗くんはいつものように、ほとんど表情を変えない。冷静な立ち振る舞いだ。

「遅くなってしまって……申し訳ありません……」
「秋斗くん、検査結果はどうだったの?」
「問題はないそうです。このまま、この治療を続けていく形になると思います」

それでも秋斗くんはゆっくりと視線を私たちに向けて、どこか苦しそうに続けた。

「ただ、慢性的な経過をとり、根本的な治療には至っていません。今までのように、突然、春陽と入れ替わる可能性が高い。そして、失った春陽の時間が戻ってくることはないそうです。――それでもさ、俺は今も生きてるんだよなー」
「あ……」

突然の口調の変化とともに。
春の日だまりのような――春陽くんのような、にんまりとした笑みを見せた秋斗くんに、私の心臓が早鐘を打つ。

「俺たちが……いや、僕たちがこうして今も一緒に生きられるのは陽琉のおかげです」

そう言い切った秋斗くんは、これ以上となく美しく微笑んでいた。

「うん。そうだね」
「まるで……はるくんが残してくれた奇跡みたいだねー」

私たちは並んで空の果てを見つめる。風が吹き、ふわりと桜の花びらが舞い踊った。

新しい季節を迎えても、確かに今こうして、間違いなく、春陽くんはこの世界に存在していた。
その事実は途方もなく、私とねねちゃんの心を温める。