私は必死に涙を拭って、まっすぐに前を向く。
さようならの果てに、大切な過去を抱きしめて。

「もう一通はね……はるくんのお母さんからの手紙。この手紙には秋斗くんと春陽くん、どちらも救う手段が書かれているの。でも、難しい治療法で、なおかつ成功率は低い。それでも私たちは、その可能性に賭けてみたい!」

私は生きたい。
秋斗くんと春陽くんと一緒に未来を生きたい。
泣きたくなるほどの優しさに溢れた世界を生きたい。

「僕と春陽、どちらも救う手段……っ」

秋斗くんは意識を保とうとするけど、やがて、力尽きたようにベッドに倒れ込んだ。

そして、時は……



入れ替わりの時間を迎える。



「……雫、ねねちゃん」
「……っ」

優しく温かい声で名前を呼ばれ、私とねねちゃんの心臓は高く跳ね上がる。
振り返ると、春陽くんが起き上がって、優しく微笑んでいた。
泣いてしまいそうになるのをぐっと堪えて、私も微笑み返す。

「秋斗くん、またね。そして……おはよう、春陽くん」
「おう」

私はそっと、春陽くんの手に触れた。
先程までとは違い、温かくて優しい体温がここにある。

「あのさ、雫、俺たちは絶対に諦めねーから。たとえ低くても、可能性はあるんだしさ」
「うん。私たちも絶対に諦めない!」

勇気を持ってたどり着いた今日、春陽くんは私から受け取った手紙をゆっくりと開いた。

ひとつの恋の終わり。
新しい季節に包まれながら、私とねねちゃんは愛しい人たちを見つめた。

切ない想いの果てに。
あなたたちは溢れるほどの希望をくれた。

秋斗くんと春陽くん。

そして――はるくん。

同じ魂を持つ、大好きな兄弟。その近くて遠い距離を静かにそっと愛しながら。

諦めない。
絶対に諦めないと、心に誓って。