秋斗くんが春陽くんの魂の片割れなら、私の魂の片割れはきっと、同じ魂を持つ人たちに惹かれている……ねねちゃんなんだと思う。

はるくんを失った悲しみ。
全てを癒すことはできなくても、二人でなら互いに癒し合うことができる。

私にとって、ねねちゃんは今も昔も大切で特別な友達。
私たちは不安に苛まれながらも、いつだって手探りで明日に進むしかないんだ。

やがて、秋斗くんと春陽くんかいる部屋番号が見えてくる。

「ねねちゃん。秋斗くんと春陽くんがいる病室は、ここみたい」
「あきくん、はるくん。きっと、びっくりするねー」

私とねねちゃんが立つと、部屋のドアがスライドする。
部屋に入ると、真っ白なベッドの上で横たわる春陽くんの姿があった。
その右腕には点滴のチューブが繋がれている。
そして、その隣には秋斗くんが同じように横たわっていた。

「篠宮さん、鳴海さん」

秋斗くんが上半身を起こすと、私は言葉にできない想いを抱き止めるように言った。

「秋斗くん、もうすぐ春陽くんと入れ替わりの時間なのに無理を言ってごめんね。どうしても二人がいる病室で伝えたかったの」

私はねねちゃんとともに、ゆっくりとベッドに近づいていく。
春陽くんの寝顔は綺麗だけど、どこか冷たさを感じる。
まるで脱け殻になった身体だけがベッドに置き去りにされているような、そんな虚無感だけが部屋を満たしていた。

秋斗くんたちの担当医師の先生があの後、秋斗くんと春陽くんの入れ替わる周期を調べたことで、いつ入れ替わりが起こるのかが判明していた。
とはいえ、『共依存病』がさらに進行すれば、また周期が変わるかもしれない。

「あのね、秋斗くん」

私は意を決して、猫のストラップをさげた鞄から二通の手紙を取り出す。

「タイムカプセル郵便って知ってる? 数年後の未来に届く手紙なんだ」
「未来に届く手紙ですか……」

秋斗くんの険しい顔は真剣そのもので相変わらず、春陽くんとのギャップに戸惑うばかり。
春陽くんとは違った顔がそこにある。
けれど、名を呼ぶ声もその声音も、今の私には心地よかった。

「実は持ってきた手紙のうち、一通はね……」
「あきくんとはるくんに向けた、一年前のはるくんからの手紙なんだよー」

ねねちゃんに先にそう言われて、私は不思議と笑顔が零れる。

「陽琉からの……」

秋斗くんは何かを考えているような表情になった。

もしかしたら、思いがけない出来事に戸惑っているのかもしれない。

本来なら、秋斗くんたちの家に届くはずだったはるくんの手紙。
けど、秋斗くんたちの家の住所が、離婚前と変わっていたため、巡り巡ってはるくんのお母さんのもとに届いた。