涼やかな風が流れて、夏は秋に近づいていく。
秋色に染まってきた頃、はるくんのお母さんから連絡が入った。
その連絡を受けてようやく、私とねねちゃんは総合病院に足を運んだ。

秋斗くんと春陽くんが生まれた時からずっと、『共依存病』の治療のために入退院を繰り返している総合病院に。

受付で部屋の番号を聞いて、私とねねちゃんは空調の効いた院内を歩く。
この総合病院は結構な大きさがあり、様々な年齢層の患者がいた。
秋斗くんと春陽くんが度々、入退院を繰り返している病室は本来、家族以外は面会謝絶だ。
でも、秋斗くんと春陽くんが秋斗くんたちのお父さんを説得してくれたおかげで、私とねねちゃんは何とか、病室に赴くことができた。
本当ははるくんのお母さんも、病室に訪れたかったけど、秋斗くんたちのお父さんから拒まれてしまったそうだ。

秋斗くんと春陽くんはこの報せを聞いた時、どんな顔をするのかな?

部屋に近づくにつれ、様々な感情で私の胸が高鳴っていく。

「あのね、しずちゃん」
「ねねちゃん?」
「これからも、しずちゃんたちの傍にいてもいい?」

思いがけないねねちゃんからの告白に、私はたじたじになってしまう。

ねねちゃんは夏祭りの時、春陽くんが私に告白の返事をすることを知っていた。
だから、ねねちゃんは敢えて先に帰って、私たちが二人っきりになるようにしたと思う。
それでも――。

「だって、離ればなれになったら、絶対に後悔するんだもん。それに――」

ねねちゃんは改めて、想いを告げる。

「大好きなしずちゃんの一番近くから声をかけられるような――そんな親友になりたいから。この繋がりを自分から断ちたくない」

柔らかな微笑みの裏には、底知れぬ悲しみが見え隠れしていた。

「これからも……大好きなみんなの傍にいたい」

ねねちゃんは猫のストラップをさげた鞄をぎゅっと抱きしめ、自分も私たちの絆の輪の中に入りたい、とそう言いたげな顔をする。
彼女の偽らざる本音。
その甘い痛みを、もう見て見ぬふりすることはできなくて。

「……うん。私たちは私たちの関係のままで、この先もずっとずっと一緒にいようね。私、ねねちゃんにこれからも見届けてほしい」

あの時の約束を口にして、私はこれからも傍にいると嬉しそうに微笑んだ。

「しずちゃん、わがままばかり言ってごめんね。ありがとう」

ねねちゃんは幸せを噛みしめるように朗らかに微笑んだ。