「嫌だ。そんなの……」
「篠宮さん……」
「秋斗くん、死なないで……。辛いよ。苦しいよ。お願い、どこにも行かないで……」

だって、私たちは……
『これから』を考えなければいけないのだから。

「二人を絶対に引き離させたりはしないから。どんな手を使っても、必ず二人を助けてみせるから。……だから、お願い。秋斗くん、死なないで……」
「ですが……」

その先に続く後追いの言葉。
それを理解していくごとに、私は気が遠くなりそうなほど悲しく感じた。

「……ねえ、秋斗くん。悲劇の連鎖を終わらせるために、一緒に『共依存病』そのものを変えよう」
「『共依存病』そのものを?」

『共依存病』そのものを変える。そうしないと、この悲劇の連鎖はいつまで経っても終わらない。

「……何かを始めるために、何かを終わらせなきゃいけない」
「はい」

秋斗くんの戸惑う気配が伝わった。

「……ですが、この状況を終わりにできるのでしょうか」
「……どんな出来事にも、終わりが来ないことなんてないの。ただ、いろんな終わり方があるだけ……」

それは紛れもない事実。
そんな確信が心のどこかにあった。

「秋斗くん、一緒に探そう。春陽くんを救う方法を。どちらかを犠牲にする方法では、誰も幸せになれない」

根拠なんて何もないけれど、私は秋斗くんに希望を告げたい。
世界の片隅で、奇跡が起こるように。

「私、待ってる。あなたたちが『共依存病』の症状を克服して帰ってくるのを……。あなたたちともう一度、出会いたいから……。だって、私が好きになったのは、秋斗くんでもあり、春陽くんでもある……あなただから」

できれば、これからもずっと。あなたたちの一番近くにいたい。

その想いに応えるように、秋斗くんは深呼吸するような間を空けて言葉を紡いだ。

「篠宮さん、ありがとうございます。聞いてもらえますか? 僕だけの本音を」
「うん」
「僕は、春陽を救いたい。もう一度、春陽とともに、この世界で笑っていられるように。立ち止まっても、つまづいてしまっても、それでもまた、歩き出すことだけはやめたくないです」

その言葉はどこまでもどこまでもどこまでも、私の内側に響いた。

「大切なのは、春陽と関わろうとすること。目を開き、耳をすまし……互いをはかりながら……共に最善の道を探していきたいです……」

間を置いて、秋斗くんはそう言葉を落とす。
そして――。