「え……。桐島教授って……もしかしてはるくんのお母さん?」
「しずちゃん。はるくんのお母さんが取り組んでいた難病の克服治療って、『共依存病』のことだったのかも」

はるくんのお母さんが『共依存病』治療の研究をしている教授。
二重の意味で驚きだ。

やっぱり、はるくんと春陽くんたちは何らかの関連性がある……?

そう思ってしまうのは、私の勘繰りすぎだろうか。
それとも――。

「はるくんのお母さんに会ったら、春陽くんの時間を取り戻す方法のヒントが見つかるかもしれないね」
「そうだね」

ねねちゃんに釣られて私は頷く。
推測の領域だが、その可能性が高い。

「でも、はるくんが亡くなってすぐに引っ越してしまったから、どこにいるのか、分からないね」
「……うん」

私とねねちゃんは困ったようにため息を吐く。
はるくんのお母さんに会って、『共依存病』について聞きたい。
だが、そもそも会うこと自体が難題だった。

「どこに引っ越したのかな?」
「分からないの。知らないうちに引っ越していたから」

私の質問に、ねねちゃんは途方に暮れたように応える。
はるくんの死に嘆き悲しんでいたはるくんのお母さんは、私達の知らぬ間に別の地に引っ越してしまっていた。

「『共依存病』の研究者。今まで謎だった『共依存病』について何か分かるかもしれないな」
「そうだね」

春陽くんが示した着眼点に、私は強張っていた表情を和らげる。
春陽くんの言うとおり、はるくんのお母さんと『共依存病』の繋がりを知ることができただけでも御の字なのかもしれない。
確かに、春陽くんの時間を取り戻す方法のヒントを見つけることができたのだから。

「しずちゃん、わたしも手伝うよ。まずは、今のはるくんのお母さんのことを知ることから始めよう」
「うん。ねねちゃん、ありがとう」
「頑張ろうね」

私とねねちゃんはお互いに顔を見合わせて頷く。

「おう。二人ともありがとうな」
「元気だよね」
「はるくんみたいだね」

そこに春陽くんも加わったことで、今までの溝を埋めるように仲良し三人組が揃った気がした。