よし!あとは…


「あ!秋斗くんからだあ!」

徐にスマホを取り出して耳に当てる。


「はいはい、え!なんだってー!?向かい風がすごくて進めない!?そりゃ大変だぁ!迎えに行くよ!…というわけで秋斗くんは外出た瞬間終わったらしいから2人は先に行ってて!あとで合流しよう!」

浜辺さんにウィンクしてカタカタと下駄の音を鳴らしながらその場を離れた。


もちろん秋斗くんから電話なんて来ていない。
美桜ちゃんの名演技である。

少し離れたところから2人を見る。
しばらくしてから2人揃って歩き出した。

その後ろ姿は誰がどう見ても恋人そのものだ。

「がんばれ!浜辺さん!」



…さて。
秋斗くんはどうしたんだろうか。

大丈夫かな。何かあったんだろうか…
連絡がないってのが怖いな…


祭りの夜だし…
まさか…か、神隠しとか…?


その時

ポン
と、私の肩に誰かの手が乗った…


「ぎゃああああ!」

「うわっ」

桜と佐倉の神隠しぃぃいい!


「佐倉っ!俺だよ」

へ?

「あ、秋斗くん?」


そこには汗を滲ませ肩で息をする秋斗くんがいた。

白いTシャツに黒のスキニー。その上に紺色の薄くて長いアウターを羽織った、カジュアルかつとびきりクールな私服。


「ごめん、ここにくる途中知らない女の子達に絡まれちゃって…これがなかなかしぶとくてさ」

逆ナン!?

「連絡先交換してって言われてスマホ持ってないって嘘ついたから…しばらくスマホ出せなくて連絡取れなかった」


そういうことだったのか。

まあこのイケメンじゃあそこいらの女子が放っておかないことは分かるが
想像以上のモテ具合に美桜ちゃんびっくり。