一限目が終わり、さりげなく眼球を横に動かして秋斗くんを盗み見る。

これ日課。



「おーい!佐倉!」

と、自分の世界に浸っていたら聞き慣れた声に名前を呼ばれる。

教室の入り口で私に手を振るのは…


背の高い他クラスの男子。
幼馴染の尾佐奈なじお(オサナナジオ)

「いや、名前…」

「ん?」

「いや…」


私の幼馴染であり、バスケ部のゴリラ。
はっきり言ってイケメンではない。

「果てしなく失礼だな」

「で、何用?尾佐奈」

「いや、これ」


尾佐奈が私に差し出したのは

…か、回覧板…だと!?

なぜ学校で!?
家に届けろよ!


「持って来ちまったんだからいいだろ。ほら」


この…ゴリラやろうが。
これだから哺乳類は。

どう考えても嵩張るだけでここで渡す利点何もなくない!?


「はい渡したからな、じゃよろしく」

去っていく哺乳類を睨みつけてため息をつく。



信じられん。

幼馴染っていうくらいだぞ。

学校経由するより直接家に持ってった方が楽でしょ?


え、なに?
なんなのこの手間。

あのゴリラ…もしかして脳の細胞が足りてないのか?


無駄でしかないでしょ。
なんなのこの謎行程…

っていうか学校で回覧板の受け渡しが行われてるとこ見た事ないよ。