保健室

がらんとしている校舎。


「佐倉座ってて」



椅子に座らされる。

ま、まさかと思うけど


「あ、秋斗くん?手当てしようとしてる?」

「ん?うん。だって右腕だし自分じゃできないでしょ」


ええ!?
ちょっと待って!

それは嬉しいんですけど!確かに自分じゃ難しいんですけど!

でも心臓が持たないかもしれないので!
タコみたいになるかもしれないので!


「い、いいよ!自分でやるよ!」

「それじゃ俺が来た意味ないでしょ?」

「えっ保健室に用事って…」

「そんなのないよ」

ええ!?
なっなななんで


「き、気まぐれですか?」

「…んー。何でだろうね」

にっこりといい笑顔を向けられる。



だからやめて欲しいのに…
もう勘違いしたくないんだから。

ぶんぶんと首を振って煩悩を飛ばす。

仮にも片想いの相手にこんなことされちゃ参っちゃうよ!


ふーっと深呼吸をした。

変にときめかない…ときめかない。


秋斗くんは純粋な優しさでクラスメイトを手当してくれるだけ。

そう思いたいのに
この行動に意味を求めてしまう。