「佐倉、怪我してんの?」

!?

「秋斗くん!?」


霜崎くんの視線の先にはタオルを頭にかけた秋斗くんがいた。


「あ、ちょっと擦りむいて」

「さっきのあれか」

得点板にぶつかったやつです。

「大丈夫?」

「うん、痛くはないよ。今から保健室行くし」



「…保健室行くなら俺が連れてくよ」

へ?

秋斗くんが私から霜崎くんへ視線を移して言った。


「君、体育委員の仕事とかあるんでしょ?」

秋斗くんのいつもの笑顔。
霜崎くんの表情は見えない。


「…別に佐倉さんを連れてくことくらいできるけど」

「手が空いてるんだから俺が行ったほうがいいでしょ」

「あんた試合で疲れてるだろ」

「わー優しいね。そんな気遣いしてくれるなんて」


…な、なんだ?
お互いに思いやりのある言葉に聞こえないんだけど。


「俺佐倉さんとペアだから」

「俺も保健室に用事あるからついでだよ」

「……」

「……」


なに?なんなの?



「あっそ。じゃ、お言葉に甘えて」

「うわっ」


霜崎くんが少し早口でそう言って私の腕を前に引いた。
ぐんっと体が前に出る。

優しくしなさいヨォ!


「委員会の方には俺から言っておく。お大事に」

「あ、うん!ありがとう」