ビーッ!


試合再開の合図と同時に秋斗くんが素早く動いた。

どこにボールがあったか確認する間も無く、気がついたら秋斗くんがボールを持っていた。

先輩達も驚いて動きが鈍くなる。

そのままドリブルで全員を抜いてゴールを決めた。


…す、すご。


試合が再開して十秒たらずの間に点数が入った。

一瞬しんとする体育館内。
でもすぐにわあっと歓声が上がった。



秋斗くんの本気。
さっきとは空気が違う。

心臓にズドンと殴られたような衝撃。


ーかっこいい


それ以外の言葉でどう表現すればこの光景が伝わるかわからない。
釘付けになる、私の好きな人。



14点と14点。
同点まで上り詰めた。

試合は残り1分。

先輩達にも焦りが見える。

歓声の大合唱。



「がんばれっ」


審判だから応援しちゃダメだと分かっていながら
秋斗くんが私の前を通る瞬間を狙い、小さな声でそう言った。


最後の最後にボールが2年生に渡る。

すぐに秋斗くんにパスが回り、離れた位置からゴールにボールが飛んだ。



ビーッ!!

試合終了のベルと同時にガコン!とゴールに入った。


スリーポイント!

誰かに言われる前に素早く得点をめくる。


14点/17点


そしてやっと歓声が追いついてくる。

わああぁぁぁ!っと体育館が震えるほどの声が上がった。



「2年1組の勝利です!!」

アナウンスが上擦った声で言った。