なんて会話をしているうちに体育館に到着。
人で溢れかえっている。
珍しい2年対3年の決勝だからみんな面白がって見に来てるのかな。
私達のクラスも三年に負けじと最前列に入り込んでいる。
人で溢れかえる体育館を縫うように進む。
コートにはごつい三年生チームと私達のクラスが向かい合って立っていた。
秋斗くんは体操服を腕まくりして汗で濡れた前髪をかきあげている。
ギャンかっこいい。
女の子の目線がそこへ集中しているのは言うまでもない。
秋斗くんの試合が見れる。
勝手に嬉しくなってふふっと笑う。
するとどういうわけか目線の先にいた秋斗くんが振り返った。
思わず大きく肩を揺らす。
こっち向いてっ!
なんて少女漫画のヒロインみたいな可愛らしいお願いをするキャラではないけど
それでもやっぱり
目が合うだけでこんなにも血が巡る。
『さ・く・ら』
秋斗くんの口がそう動いたように見えた。
そしてその表情がふと柔らかくなる。
「が・ん・ば・れ」
大袈裟に口を開いてそう言った。
秋斗くんが応えるように拳を上げた。
彼がこんなことをする相手はきっと私だけではない。
私だけなんじゃないかと思って勘違いしたのはついこの前の話だし
きっと秋斗くんは誰に対しても優しくてカッコいい素敵な人なんだ。
それでも構わない。
彼の優しさを独り占めしたいわけではない。
ただ、好きなだけ。
そして
特別になりたいと願うだけだ。