いつもより騒がしい教室。
秋斗くんの隣で鞄を片付ける。

私がメイクを落としてきたのを確認したのか、秋斗くんは私の顔を少し見てにっこりと笑った。

んーそんなにメイク似合わなかったかな。



「あ、そういえば佐倉ってバレーできたんだね」

不意にそんなことを言われる。
話しかけられたのが嬉しくて思わず体ごと向いて答える。


「うん!中学の頃バレー部だったの」

「やっぱり?体育の時うまいなーって思って見てたんだ」

見ててくれたんだ!


「秋斗くんもバスケすごい上手らしいね!みんな言ってた!」

秋斗くんはバスケで出場だ。
残念ながらプレイを見たことはないけど。
帰宅部だが現役バスケ部に劣らないらしい。


「俺も中学バスケ部だったから」

そうなんだ!

中学校の秋斗くん。
私の知らない秋斗くんだ。


「現役バスケ部にも劣らないなんて、すっごいかっこ…」

かっこいいねと言おうとして思わず口を閉じる。

「す、すごいね!」


かっこいいなんて想い人にさらっと言えるような心臓は持ち合わせてないので
既に動悸の早い心臓を落ち着かせる。


「ありがとう」

それでもにっこりと優しく笑う彼はやっぱりかっこよくて
私はきゅぅーっと締め付けられる心臓の痛みに耐えるしかなかった。



『秋斗くん超かっこいい!』

なんて言える女の子たちも、私と同じように秋斗くんに恋をしているのかもしれないけど

私はこんな性格ながらも恋に対しては案外臆病なようで


こうやって1対1で話すのでさえ

精一杯なんだ。