「佐倉?」

へ?

と、今度は低音の優しい声が耳を撫でた。


「あ、秋斗くん!」

私の後ろでぽかんとしているのは、まさしく秋斗くん!



「…佐倉」

秋斗くんの目が私と尾佐奈を交互に見る。

「なんか…今日の佐倉…」


お、お、おお!?

ついにくるか?
来るか!?


「…髪の毛がふわふわしてるね」

!?


「ぶふっ」

後ろで尾佐奈が吹き出したのがわかった。

キッと睨みつければ、ひーっと言って逃げ出す。
遠ざかる背中をさらに睨みつけてから秋斗くんに向き直る。



こほん。


「おはよう秋斗くん」

「あ、おはよう佐倉」


……

え、本当にそれだけ?

待って私そんなに髪の毛ふわふわしてる?
もしかして巻きすぎた?



「…なんか今日の佐倉はいつもと違うね」

「そ、そう!ちょっと髪の毛巻いたりメイクしたりしてみたの!」

「へぇ…なんで?」


え。
なんで?なんでって

え…と
秋斗くんに可愛いと言われるため…ですが

そんなこと口が裂けても言えない。
いや口が裂けたら言えるかな。


「んと…」

「さっきの男子のため?」

…へ?