ゆっくりと身体を起こす私と唖然とする冬紀くん。


「…い、いだいぃ…」

「だっ大丈夫か!」


涙目で座り込んでいる私に合わせて屈んでくれる冬紀くん。



「怪我は?」

「あ、あじ…」

「足か…顔じゃなくてよかったよ」


「血がぁー!」

「出てない出てないから。よく見なさいほら」

「時差で出るー!」

「出ない出ない」


「いだいぃ…」

「そりゃあんな派手に転けりゃあな」



冬紀くんの大きな手が私の頭を撫でる。

ぐすんぐすんと鼻を啜ればそんな私を見て呆れたように笑う。

その何もかもに…胸が鳴く。



しかし冬紀くんが唐突にハッとして私から離れた。

なぜ離れたのか分からず私が首を傾げると、気まずそうに笑う。


「どうしたの?」

「あーいや…だって……ん?」


言いかけて何かに気づく冬紀くん。
フリーズして私を見る。


「美桜…なんでここにいんの?萩原は?」


あ!そう!それ!



「ねぇ!なんで帰っちゃうの!またあとでって言ったのに!」

「え?」

「なんなら昼休みだって放課後待っててねって言ったじゃない!」

「いや…だって用件はもうさっき済んだんじゃないの?」


さっき?
さっきってあの廊下での会話のこと?

ちっがーう!!


「違うよ!冬紀くんが帰ってたから慌てて走ってきたの!」

それで転けたんだよ!
貴様のせいじゃぁぁ!