「………」

「……」



「正直」


少しの沈黙を置いて、不意に秋斗くんが静かに口を開いた。


「…佐倉は俺を選んでくれるって、ついさっきまで思ってた」




「でも…教室に入ってきた時の佐倉を見て、なんとなく察した」

……そう。


「俺はかなり長い間佐倉を見てた人間だから、佐倉の意識が俺から別のやつに移ったことに気づかないほど鈍感じゃない」

「……うん」



「なぁ…佐倉」


秋斗くんが席を立つ。

苦しいくらい切ない目で私を見る。


「俺を好きだった頃の気持ちを思い出すことはない?…どうしても?」


……


「思い出すことはあるよ。今も思い出してる。忘れることなんてない」

「だったら…っ」


「でも、それ以上に心から好きな人がいる」

「っ…」



「私は確かに秋斗くんが好きだったし、あなたの恋人になりたいって心から望んでた。でも…今その時の気持ち以上に、一緒にいたい人がいるの」

「……」


決してあなたへの好意が消えたわけじゃない。
ただ、それを超える気持ちを見つけただけ。


「だけどね。秋斗くんに恋してた時間は、私にとってかけがえのないものだから。これだけは誰にも、何にも変えられないよ」



私の青春にあなたはとても大きく存在している。

きっと死ぬまで、忘れることはない。