どれくらいの時間そこにいただろうか。
その時間は決して短くはなかった。
陽はだいぶ傾いてきた。




……タッタッタ


っ!



その時、確かに聞こえた。
扉の向こう側、誰かの足音が近づいてくる。



混乱のピークを通り越して、完全に力が抜けていた私の手はブルブルと震えている。

その震える手で力無く扉を叩く。


お願い!
気づいて!



…タッタッタッタ



誰…
誰でもいい…


いや違う…これは…

もしかして


足音に混じって聞こえる、はぁはぁという呼吸音。



その名を呼ぶべく、私は思い切り息を吸った。



「冬紀くん!!」


「っ美桜!!」



私の声に応えた声。

ドバッと涙が出た。



そして

ガタッと揺れた扉が勢いよく動いた。


「みっ…!!」


私を苦しめた扉が開き、冬紀くんが視界に入った瞬間、私は思い切り彼に抱きついた。



怖かった
怖かった


香る冬紀くんの爽やかな匂い。

安心できる人の温もり。

縋るようにない力で強く抱きつく。



なんで冬紀くんが私を見つけられたのか
なんでこんなところに閉じ込められていたのか

聞きたいこと言いたいこといっぱいあるけど


とにかく今は…

ただ、安心したかった。