「好きな人?特にいないけど?」


………?

え、あ、え?


「好きとか恋愛とかよくわからないし、あんまり興味ないかな」



顔を見られず下を向いていた私は、ゆっくりと頭を上げる。

秋斗くんはいつも通りの平然とした顔で不思議そうに私を見ていた。


「どうしたの?急にそんなこと…あ、もしかして誰かに聞いて来いって言われたの?」

あ、あー

「えっと…まあそんな感じ…かな」

「やっぱりかー。最近そういうの多いんだよね。俺は恋愛する気はないし好きな人とかも全くいないから。そう伝えておいて」

「うぃ、うぃす」



……。

上手く聞けなかった上に…私からの質問とも思ってもらえなかった。



そっそうだよねー!
恋愛にうつつ抜かしてるのは私だけだよね!

考えてみれば秋斗くんはモテるし、みんなに平等に優しいし…

恋愛経験の全くない私が、勝手に思い込んでしまっただけなのかもしれない。


いや、かもじゃないのか。

そうなんだ…


はっ恥ずかしい恥ずかしい!

でも変に告白する前でよかった!


……。


なんとなーく妙な気分になって、思わず席を立った。

ちょっと外の空気でも吸ってこようかな。


「…佐倉?」