ふわり

と、暖かいものが私を包む。


冬紀くんはあんまり匂いがしない。

でもここまで密着すれば少しだけ香る。
なんだかフルーツみたいな甘酸っぱい香り。



「…美桜、めっちゃ心臓鳴ってる」

「鳴ってるのそっちでしょ」

「はは、そうかも」


…ああどうしよう。
わからなくなってきた。

私って…誰が好きなんだろう。


「萩原のこと…好き?」




そんな簡単に捨てられる想いではないとわかってる。



花火大会の時、私のために怒ってくれた。
いつも優しくて、カッコよくて、でも本当はちょっと弱くて…掴みどころないけど

やっぱり一緒にいるとドキドキする。

秋斗くんはそんな人。


でも


花火大会の時、迷わず助けてくれた。
球技大会の時も体育祭の時も、私を大切にしてくれて、想いを素直に伝えてくれた。

一緒にいるとすごく心地がいい。

冬紀くんはそんな人。



「……わからなくなってきた」

小さな声で言ったそれを彼は聞き逃さなかった。


「…俺にしなよ。美桜」


優しくも軽くもない音。
意思を持ったはっきりした音。


冬紀くんが私をじっと見た。


「好きだよ」