「美桜!」



この声は…


それを聞いた私は勢いよく振り向き、秋斗くんは途端に嫌そうな顔になる。


「冬紀くん!」


ぜぇぜぇと肩で息をしている。
セットされていた髪は少し崩れていて、ひたいに汗が滲んでいる。


密着状態の私たちを見て固まる冬紀くん。

でも明らかに私が抵抗の体勢をとっていたのですぐにハッと我に返って近づいてくる。



「秋斗くん!いい加減に離して」

「………」


秋斗くんは何も言わなかったけど手を離しそうな雰囲気でもなかった。
力は緩んだけど相変わらず腕は掴まれたままだ。



「…離せよ、萩原」

「首突っ込むなよ、霜崎」

「先に突っ込んできたのはお前だろ。美桜は今俺との時間なんだよ」

「知らねぇよそんなこと」

「横暴かよ…てか美桜の前で本性晒して大丈夫なわけ?王子さん」

「もうどうでもいい、佐倉も悪い」


はぁ?
黙って聞いてれば何を!
秋斗くん完全な悪役になってるんだけど!

秋斗くんを睨みつけて再び手を離そうと試みる。



「離せよ…美桜が嫌がってる」

「…」


ひっ

秋斗くんのえげつないほど鋭い目が私に向けられて思わず背筋が凍る。


…お、恐ろしい。
冬紀くん日常からこれ向けられてるのによく耐えられるね…