「…あきと、くん」
秋斗くんの胸を押して自分から離れる。
だめだ…
ちゃんと向き合わないと。
私の気持ちとも、冬紀くんの気持ちとも。
がむしゃらに逃げ出して、自分でもよくわかりませんなんて身勝手だし最低だ。
秋斗くんから視線を逸らし、そのまま後ろに下がろうとしたら腕を掴まれる。
「どこ行くの」
「ど、どこでもいいでしょ」
目を合わせないまま言った。
「あいつのとこでしょ」
…う
「なんで?霜崎のほうがいいの?」
そうとは言ってないけど…
でも
このまま秋斗くんと一緒にいたって何も分からないし、振り回されてばっかなんて嫌だし。
このまま秋斗くんに流されたら、冬紀くんに一生顔向けできない。
冬紀くんに対する感情がなんなのか、今はまだ分からないけど…
とにかく
彼を蔑ろにしたくないの。
「離して」
「……嫌だ」
え。
「あ、秋斗くん?」
「嫌だ」
ええー…
あなただだこねるキャラじゃないでしょ。
分かりやすく拗ねている秋斗くん。
い、いや…負けるな!佐倉美桜!
ちゃんと向き合うって決めたんだから!
「離して!」
「嫌だ」
無理やり手を離そうとするけど
秋斗くんの力に叶うはずもなく、手は抜けない。