「え、あ、秋斗くん…?」
「うぜぇ」
…え?
な、なんと?
「まじうぜぇ」
は、はい?
「クソうざい」
「す、すいやせん!!」
秋斗くんの声があまりにもドスの効いたヤバそうなものだったので咄嗟に謝る。
え、この人秋斗くんだよね?
人違いなんてことないよね?
うん間違いない…
だって秋斗くんの匂いだもん。
なんで…抱きしめられてるんだろう。
もうワケ分かんないけど、好きな人に抱きしめられて正常で居られるほど私は冷静な人間ではない。
でも失神せずに済んでいるのは秋斗くんの様子が明らかにおかしいからだ。
私が知っている、私が好きな優しい秋斗くんではないからだ。
「秋斗くん…?」
「佐倉が好きなのは誰?」
へ?
「誰?」
え?
言えと?
本人を目の前にして?
言えと?
「霜崎なの?」
「いや…それは」
「違うんだろ?」
「よ、よく分からないよ」
「分からないじゃない、違うの」
ええ…
「フラフラすんなよ」
え?
「リードでも繋いでおかないとダメなの?」
な、なんの話でしょうか。
「なぁ佐倉」
「は、はい」
「頼むからさ…」
秋斗くんの私を抱く腕の力が強くなった。
「変わらないでよ」