……

「千夏なんか変わったな」

「え?そう見える?……だったらまぁ美桜ちゃんのおかげかな」

佐倉?


「花火大会の時私に言ってくれたんだよ。私たちはまだ未熟者なんだから、恋でもなんでもフルスロットルでいいんだってさ。ウケるよね」

…佐倉らしいセリフだな。


「でもなんかその言葉で、今まで変に大人ぶってた自分が馬鹿みたいだなって思ったの。だから突っ走ってみるかーって、自分に素直になってみるかーって思ったの」

自分に素直…ね。



「秋斗。美桜ちゃんめっちゃいい子だよ?」

不意に千夏が真面目な顔で言う。

「あんな可愛くて明るい素敵な子、すぐ盗られちゃうよ?」


「……わかってるよ」

そんなことわかってんだよ。



自分の気持ちだって、もう抑えられそうにないことも気づいてるんだよ。

でもそれに気づいてしまったら、きっともう後戻りできなくなるから
だから頑張って背を向けてんだよ。



「きっと近いうちに、自分の本音を無視できなくなる日が来るよ」

癪に触る笑い方をする千夏。


「いつか本物のダブルデートしてよね」

俺の肩を軽く叩いて鮮やかに去っていく。



「……」


もうそろそろ俺も限界だな。


大きくため息をついて、佐倉と霜崎が向かった方へ足を進めた。



ーーー