「はぁ…」

看板を持って生徒玄関の前で並んで立つ私たち。


秋斗くんには上手く躱わされてしまった…
せっかく立ち向かってみたのに…
秋斗くんの方が上手だった…



「もう秋斗くんが分からないよ」

思わず本音を溢せば


「佐倉が言ったんでしょ」

え?

「自分に素直になれって」

…ま、まぁ
言ったけども


「だからそうすることにした」



「もう安全圏を狙うのはやめるよ」

あ、安全圏?
どういうこと?


「佐倉が今みたいに、ずっと俺のことで悩んで頭を抱えていられるようにするってこと」

……はぇ?

「他のことなんて考えられないくらい」


秋斗くんは横目で私を見て、フッと笑う。

ギュンと心臓が鳴る。



それ…
どういう意味?

私のこと、どう思ってるの?

聞きたいのに、聞けない。
もどかしいのに、心臓は充分苦しい。

秋斗くんへの恋心は、まるで麻薬みたいだ。


「秋斗くんの意地悪…」

「心外だなぁ」



もう隠さなくなってきた…ということだろう。


私の知らない秋斗くんが

いよいよ化けの皮を剥ぐ。