「ねぇ佐倉。どうしてそんなに顔が赤いの?」


秋斗くんの目はいつものような優しいものではなく、ギラっと奥が怪しげに光っている。

少し上がった口角と、綺麗に歪んだ眉…

どちゃくそにかっこいい顔ではあるが、彼の纏う不思議なオーラにうまく言葉が出なくなる。



「あ…秋斗くん、わざと言ってるでしょ」

「おや」


私が好戦的な態度を見せたせいか、意外とでも言いたいような表情をする。


冬紀くんのことも秋斗くんのことも、私には向き合わなければならない問題が多すぎる。

だから逃げ続けるわけにはいかぬっ!
佐倉美桜!戦う女!



「佐倉は俺の一挙一動でありえないくらいそこが動くんでしょ?」

秋斗くんがクールな顔で私の心臓を指差す。

「ぬぁ!」

完璧に覚えてやがる!!


「そっそんなこと言ったっけ?」

頑張ってしらを切れば…


「言ったね。勘違いしたくないんでしょ?」

ぬああああ!

意地悪!
この人意地悪だ!!



「そんなに睨むなよ。俺だって同じだから」

…え?


「あはは、すごい間抜け面になってるよ」

ぽかんとする私のおでこを指でつつく秋斗くん。
クスクス笑う顔は作られたものではない。


「ふふ、可愛い」

へっ?



「さ、呼び込み行こうか」

なっ

「ちょっちょっと待って秋斗くん!なに!?どういう意味!?」


ドックンドックンと心臓が波打っている。


「置いてくよー」

「ま…待ってってば!」