「冬紀くん?」

座り込んでサイレント発狂していた私を呼んだのは汗だくの冬紀くんだった。


「どうしたの?そんな汗かいて」

「はぁ!?美桜が萩原に拉致られてたから探してたんだろうが!」



「さっきの萩原明らかに様子おかしかったけど…美桜は無事?」


…もしかして

「…心配してくれたの?」

「当たり前だろうが!」


……


「文化祭始まる前で忙しいだろうに…わざわざそんな汗かいて探しにくるなんて…暇だね」

「はぁー?このっ!人がせっか…く……」


……

……


「……美桜…なんでそんな顔してんの?」

「…」



なんで冬紀くんは
こんなにも私に優しいのだろう。
当たり前のように心配してくれるんだろう。

私を見つけた時の汗だくの彼の必死な顔が
脳裏に焼き付いている。



思えば前もこんなことがあった。

秋斗くんに好きな人がいるか聞いて見事撃沈した時も…
花火大会の時も…
体育祭の時も…

冬紀くんは当然のように私を心配してくれる。



意味もわからず私を連れ出して振り回す秋斗くんとは違う。

彼をここまで動かす動機になったのは、私への心配。


そんな…甘ったるいことを当然のように言う。



「何があったのか…話してくれるか?」