「…秋斗くんは私がこの服着るの嫌なの?」



「え、いやなの?」

いや私が聞いてるんよ。


「…嫌…?なのかな…?」


……

無自覚なの?



あーそうだった。
無自覚だったこの人。


秋斗くんにとっては無自覚の一言で片付けられるかもしれないけど
私には無理なんだよ。

腕を掴まれるだけで、真っ直ぐ見られるだけで
苦しいんだってば。



「…振り回さないでよ」

「…え?」


ああ苦しい
胸が痛い


「私は秋斗くんの一言で、一挙一動であり得ないくらいここが動くの」

胸に手を当てて秋斗くんを見上げる。

「だから…意味もなくこんなことしないで。もう勘違いしたくないの」


期待すればするほど、叶わなかったとき、辛い。

いくら私でも
辛いときは辛い。

貴方が好きだから。



呆然と私を見る秋斗くんに背を向ける。


ダメだ。
私自身が何を言い出すか自分でもわからない。

取り返しのつかないことを言い出す前に
ここは退散しよう。


「…いくね」


なるべく早足で来た道を戻った。