借り物競走後


退場を終えた瞬間派手なため息をつく霜崎くん。

「はぁ…」

「人気者も大変だね」

「…これ絶対あとでからかわれるやつ…」


「好きな人とかじゃなくて同委員会メンバーだって言えばいいじゃん」

「……まあ、そうだけど」

こういうくだらないことで揶揄うの大好きだからねぇ高校生でも。



「まあ何はともあれ、一緒に走ってくれてありがとうね、霜崎くん」

「……霜崎なの?」

え?

「さっきは冬紀って言ったじゃん」


あー
それはなんか周りに流されてというか…
無意識というか…


「いいじゃん冬紀の方で。名字だと距離あるし」

そう?
まあ、呼び方に特にこだわりはないからなんでもいいけど。

「じゃあ冬紀くんで」


「…俺も美桜って呼んでいい?」

ん?

「いいよ?」

「…ん。美桜」



……おお
また、なんとも言えない表情をする。

私の返答にやわらかく笑った霜…冬紀くん。


何がそんなに嬉しいのか…
彼の笑い方が元からこうなのかは分からないけど…

その表情で名前を呼ばれると、なんだか変な気分になるね…