「霜崎くん!」

テントへ入るなり叫ぶ。


「うお、なに」

「一緒に来て!」

「え、なにゆえ」

「借り物競走!」



借り人だけどね。

「俺?」

「同委員会メンバーだから霜崎くんでなきゃいけないわけじゃないけど、まあ仲良いから!」

仲良くない人と走るの気まずいじゃん?


「あーそゆこと。他団だけどな」

「嫌ならいいんだけどね!」

「いや、行くわ」



いそいそとテントから出てきてくれた。


「行っくわよぉ!」

「はいはい」

霜崎くんと並んでゴールを目指す。



「ええ!?冬紀走ってるー!」
「珍しいー!冬紀ー!」

げろ…

走り出して早々にそんな声が上がる。
霜崎くんが人気者だったということを思い出した。


「冬紀ー!お題何ー?好きな人ー?」

「ちげぇよ!」

あーやだやだ!
こうなることくらい予想しておくべきだった!


「冬紀ぃ!」
「「せーのっ!ふーゆきくーん!!」」

冬紀冬紀うるさいなぁ!

「冬紀ー!走ってんじゃーん!」

「うるせぇな」



もう!
声かけられるたびに遅くなるのやめてよ!


「冬紀くん!」

「へ?」

「早くして!」


周りに影響を受けてつい名前を呼んでしまったが気にしない!
そしてあんまりにものろいので腕を引っ張る。


「ちょ、佐倉さん!?」

のろいんしゃバカタレェい!

周りにヒューヒュー茶化されながらも無視して手を引き続ける。


「冬紀ー!顔赤くなってんぞー!」

「っ!…るっせぇ!」



そして
ゴール!!

二着!
惜しい!