「ごめん佐倉、行こうか」



「あ、うん!」

私を見た秋斗くんはいつも通りの笑顔だった。


「霜崎くん、本当にありがとう」

あなたが居なかったら…ああ考えたくない。

「…気をつけろよ」

うん

「心配かけてごめんね、ありがとう」


「また学校でな」

「うん…」

霜崎くんは私を見た後、一瞬鋭い目を秋斗くんに向けた。
そしてそのままスタスタと消えていく。


霜崎くん…ヒーローみたいだったな。



軽く手を振って秋斗くんに向き直る。

「もうすぐ花火が始まるけど歩ける?」

「うん」

「…もうはぐれないように…」



「へ!?」


スルッと私の手に秋斗くんの手が重なる。

「ちょっとの間、こうしてて」

手っ
手がっ…繋がってるっ!


プシューと煙を出す私ににっこり笑いかける秋斗くん。

そのまま手を引かれて歩き出す。
あたかも恋人のように。



さっきまでの恐怖や不安が遠のいていく。

秋斗くんの温かい手。

思わず少し握り返せば
一瞬だけピクッとして、同じように握り返してくれる。

私よりひとまわり大きい手。


ドキドキとうるさい心臓が手を通して伝わらないか心配しながら…
少し前を行く背を追った。