その時


「佐倉!!」

え?

今度は聞き覚えのある声。

私と霜崎くんの視線の先
肩で息をしながらこちらを見ていたのは…


「秋斗くん!」

秋斗くんだ。
来てくれたんだ…



「…佐倉?」

秋斗くんの視線が私の着崩れた胸元に移る。


その瞬間
ぞくっと寒気がするような鋭い目つきに変わった。

そしてその視線が私から霜崎くんへと移る。


「…お前」

ドスの効いた低い声。


そして

ぐいっ!

「わっ!」


霜崎くんと向かい合って立っていた私はすごい力で後ろに引っ張られた。

そのまま
ぐっと秋斗くんに背中を抱え込まれるように抱かれる。

何が何だかわからず目をパチクリさせる。



「…お前佐倉に何した?」



「…」

あ、待って、違う秋斗くん!
霜崎くんは助けてくれただけ!


そういえば私は秋斗くんにヘルプメールを送っている。

秋斗くんから見れば、私が霜崎くんに襲われたみたいになってるんだ。


「秋斗く…」


ガッ!


!?

私が声をかけるより前に、秋斗くんが霜崎くんの胸ぐらを掴んだ。

思わぬ光景に言葉を失う。



普段の秋斗くんからは想像もできない
見たことない秋斗くん。

本気でキレた秋斗くん。

…私のために、怒ってる秋斗くん…


胸ぐらを掴み上げた秋斗くんの表情は
恐ろしく歪むわけでも、睨みつけるわけでもなく

なんの表情もない真顔で、ただ恐ろしく冷たい、いつもより大きく開かれた目が光っている。


自分に向けられたわけでもないのに鳥肌が立つ…
動けなくなる…