私の目の前にしゃがみ込んで落としたスマホを差し出す霜崎くん。

その目をただただ見つめながら、ヒュッヒュッと落ち着かない息を整える。


「…震えてる。大丈夫だからゆっくり息して」

私の背中をさすってくれる。


震えがおさまらない。
それどころか何故だか猛烈に涙が出てくる。


怖かった

怖かった

助かった

よかった


「うぅ…」

「…佐倉さん…」


情けない姿を晒していることは分かっている。

それでも…
なんの気休めになるのか分からないけど、とにかく何かに縋りたくて霜崎くんの服の裾を握った。


安心できる人…
この人は安心できる人だ…

間違いなく逞しく居てくれる目の前の彼を見て、余計に涙が出てくる。



「…なんで一人なの?萩原秋斗と一緒なんじゃないの?」

私の不注意ではぐれました。
と言いたいけど
息を吸うのに必死で声が出ない。


「…なんで…っこの佐倉さんを一人にしたんだよ」

このって…どういうこと?

「こんな粧し込んだ可愛い格好してたら他の男が放っておくわけないだろ」

え?

「そのくらい…見りゃわかるだろうが…」

霜崎くんがイライラしたように呟く。



「佐倉さん、立てる?」

「…うん」

霜崎くんが手を出してくれる。
それに捕まってなんとか立ち上がる。


「っ!さ、佐倉さん」



「ゆ、ゆかた…着崩れてる、胸元」

霜崎くんは口元を手の甲で覆って横を向いた。




さっき掴まれた時か…
直さなきゃ