「ねーねーお嬢さん」


…へ?私?

後ろから聞き慣れない声に呼ばれた。

恐る恐る振り向くと、そこには二人組の男の人がいた。
もちろん知らない人。


金髪で鋭い目つきをしたピアスバチバチの人と
帽子を深く被ったガタイのいい人。

不自然に口角を上げた表情の二人が私に近づいた。

お酒臭い…



「今一人?何か困ってるの?」

「…えと」

「君めっちゃ可愛いね」


待ってこれ…もしかして
な、なんぱ?

急にぞわりと背中が冷たくなる。


「よかったら俺たちと一緒に行かない?」

「歩くの疲れたでしょー?車あるよー」

「…いや、大丈夫です」


待ってやばい。
どうしよう。
足がすくむ。怖い。


二人に背中を向けてスマホを素早く開く。
連絡先連絡先…


「ねーちょっとー!聞いてるー?」

「あ、スマホあんじゃん。連絡先ちょうだいよ」

「いや、そのごめんなさい」


早く…早くメッセージを…



『あきとくゆ助けれ』

手が震えていたせいですごい誤字をしたけど
とにかく送信した。

『やたいのうらかわ』

『おとこのひとが』

たどたどになってしまうメッセージ。
指が震えてる。



「あーちょっとー助け呼ぶとかやめてよ」



「俺たち悪いことしてるわけじゃないしー」

やばい…
上からスマホをパッと取られてしまった。


「か、返してください!」

「こら大声出さないの」