再び泣きたくなるのをこらえて、私は言葉を続ける。

「補佐が何を言いたいのか、どうしたいのか、全然分かりません。私に他の人を勧めるくらいだったら、最初からきっぱりと振っていただいた方が良かった。まるで私に気持ちがあるような、そんな思わせぶりなことを言わないでほしかった。あんな風に言われたら、もしかしたら、あるいはいつかは、って期待してしまうじゃないですか」

「すまない……」

補佐のかすれた声がした。

「岡野さんの言うとおりだ。君の気持ちに対する答えがまだ出ていないのなら、わざわざ言うことじゃなかったし、確かにずるいよな。でも、君に言ったことは思わせぶりでも何でもない。……あぁ、こんな言い方は君の気持ちをつなぎ止めておこうとしているようで、卑怯だな」

私たちの間に重苦しい空気が漂う。

「私にどうしてほしいですか?」

私は静かに訊ねる。

「おっしゃって下さったら、その通りにします。今後はこんな風に会ったりしないというのなら、もちろん私からお誘いするようなことはしませんし、教えていただいた連絡先も消します。でも、少しでも私に気持ちがあるのなら……」

補佐が息を飲む気配が伝わってきた。

「私とのことを、考えてみてはいただけませんか」

自分からこんなことを言うのは、かなり勇気のいることだった。けれど私は言わないで後悔するのではなく、言って後悔する方を選んだ。補佐が私とはもうこんな風には会わないと言うのなら、それは受け入れようと思う。傷つくことにはなっても後悔はしない。むしろ、きっぱりと振ってもらうことで前に進めると思うから。

しかし補佐は言う。

「もう少しだけ時間をくれないか」

もう少しとはどのくらい?

そう思いはしたが、結局私は頷いた。

「分かりました。補佐の答えが出るまで待ちます」

「ありがとう」

礼を言う補佐の声に苦悩めいた感情がにじんでいるように思えた。