「ううん、なんでもない。東野さんはどこかに行く途中?」


「え。あ、そうだけど?…そろそろ玲央来るだろうし、私はもう行くね」



くるりと踵を返して行こうとする東野さんに「待って」と呼び止める。



「今から玲央にウソ告を仕返して、関係もきっぱり断とうと思ってる。…だけど、東野さんとはこれからも話したいんだ。私よりも玲央との方が仲良いと思うし、気まずいかもしれないけど…また東野さんには話しかけてもいい?」


「…そんなの聞かなくたって、勝手に話しかければ」



前を向いたままそう言ってくれた東野さんに、思わずホッとした笑いがこぼれる。



「そっか。ありがとう」


「…あのさ、エイプリルフールって、嘘ついていいのは午前中だけなんだからね」


「…え?」



東野さんが振り向くと、少し迷った素振りで視線を彷徨わせてから私を真っ直ぐに見上げて言った。