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翌週日曜。
胡桃は送迎を兼ねた壱世に付き添われ、栗須邸を訪れていた。

「付き合わせることになってしまってごめんなさい」
「いや。ベリが丘は土日は公務を減らす方向になっているし、助けてもらっているのはこちらだから」
謝る胡桃に壱世が言う。

「……あのばあさんが無茶なこと言わないか心配だしな」

応接間で話していると、和服姿の十玖子が姿を現す。

「いらっしゃい」
「こ、こんにちは。お、お邪魔しております」

「そんなに緊張しないでちょうだい。指導中以外は普段通りで構わないわよ」
十玖子は微笑んで言ったが、この状況で普段通りというのもなかなか難しい。

「それじゃあ、胡桃さんだけ奥の部屋にいらしてくださる?」
「俺は?」
「あなたは適当にお茶でもしてなさい。外に出ていても構わないわよ」
「いや、でも」
「私は大丈夫ですから、壱世さんはお茶でもしながらゆっくり休んでいてください」

壱世が自分を心配してくれていることを察した胡桃は笑顔を見せると十玖子の後について行った。