気づくと、胡桃の目の前の地面には鹿ノ川が倒れている。

彼は呆然として、頬を押さえている。

「……ぼ、暴力だ! 市長が暴力行為なんて許されると思ってるのか!?」
「この状況でよくそんなことが言えるよな」
壱世は呆れたように鹿ノ川を見下ろす。

「訴えてやる!」
「ご自由にどうぞ」

「壱世さん、さすがにちょっとマズいんじゃ……」
胡桃の方が焦ってしまう。

「いいんだよ。市長である前に男なんだから」
そう言って、壱世は胡桃の頭にポンと手を置いた。

「無事で良かった」
彼はそのまま胡桃を抱きしめた。
(あったかい)

「パシャッ! パシャッ!」とシャッター音が響く。
「……って、なんで橘くんがいるのよ」
壱世に抱きついたまま、胡桃は眉をひそめて音の方を見た。

「おもしろいところが見られそうだったんで。期待以上っスね」
「もー! 本当に危なかったんだから!」


結局、鹿ノ川とアライは、壱世の連れて来た警察官によって手錠をかけられ連行されることになった。
胡桃と壱世と、ついでに橘も、事情を話すため警察署を訪れ、胡桃は検査のため病院にも行くことになった。