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通話を終えた壱世は、胡桃のスマホから彼女のスマートウォッチが最後に接続したWi-Fiの位置を検索する。

「だめだな。電波が微弱だと言っていたから、飯桐から更新されていない。位置情報もオフになってる」
ガッカリしたようにため息をつく。

「だけど今の話でだいたいの場所は絞られるはずだ」
壱世は警察の持っていたベリが丘の地図を広げる。

「ベリが丘のタウンWi-Fiがつながる範囲の中で、電波の弱い場所。街のはずれか建物が障害になるような場所」
地図にいくつか円を描くように指を走らせる。

「彼女の様子だと、海の近くでは無さそうなので、この辺りは除外する」
海の近くであれば、潮の匂いや汽笛の音など、胡桃なら何かに気づくはずだ。

「北側は門の中で、限られた人間しか入れないから、ここも除外」
今日、どんな人物や車が門を通ったかはわかっている。

「建物が障害になるような場所は少ないし、そういう場所は他のWi-Fiで補うようになっている」
壱世の言う通りある程度は絞られたが、それでもまだ絞り切ることはできない。

「どの範囲にも烏辺の倉庫や建物がある」