十数分後。

【大丈夫か?】
壱世からの返信が画面に表示され、胡桃はホッと安心した。

【電話はできない状況なのか?】
彼のメッセージを見て、手の震えが収まった。

(つながるかな)
腕の時計が、呼び出し音を鳴らす。

『……く、るみ?』
電波の悪さを感じさせるが、壱世の声に画面の文字とは比べ物にならないくらいホッとする。

「壱世さん!」
『大丈夫、か?』
思わず無言でコクコクと頷いてしまい、ハッとする。
「だ、大丈夫です。今一人です」

『そこに、連れて行ったのは、鹿ノ川副市長か?』
「はい。それに烏辺って人と、アライって人がいました」

『よく、連絡できたな』
「ポケットの中身は調べられたんですけど、腕時計は気づかなかったみたいで」

『そうか。どこかわかる、か?』
「真っ暗で全然わからなくて。倉庫みたいなんですけど、ドアは開かないし、Wi-Fiも弱くて」

『ベリが丘のWi-Fiだよ、な?』
「はい」

『目に見えるもの、以外にも、音とか匂いとか、何か気づいたら教えてくれ』
「は、はい、壱世さん、あの」
『ん?』

「……いえ、何でもないです」
『……必ず見つける』