「ええ、そうなんですけど……」
そう話していたところで「ガラッ」と引き戸の開く音がする。
木菟屋から、人が出てくるのが見えた。
「次回は色良いお返事を聞かせていただけると期待しています」
出てきたのはスーツ姿の男性だった。
「そう言われましても、急なお話なのでなかなか」
木菟屋の女将が何かを渋るような顔をする。
「もしかして、再開発の……?」
胡桃がつぶやく。
「江田さん。栗須さんからも言われていると思いますが再開発の話は口外していただきたくないので、忘れてください」
「誰にも言いませんけど、壱世さんも高梨さんもなんだか深刻じゃないですか? 市の再開発ってそんなに秘密にしなくちゃいけないんですか……?」
胡桃の質問に、高梨は気まずそうな顔をするだけで答えなかった。
家に帰ってからも、胡桃は高梨の表情を思い出してモヤモヤしていた。
「木菟屋から出てきた人、なんかどこかで見たことがある気がする……」
思わず声に出してつぶやく。
(市の職員てことだもん、市庁舎とかイベントで見たんだろうな)
それ自体に特段おかしいところは無いはずだ。
それなのに気になってしまうのは、やはり壱世と高梨の態度が原因だ。
壱世はあれから一度も再開発の話題を出さない。
(いくら婚約者だからって、私だってただの一市民に過ぎないから、市長としては正しいんだろうけど)
たまらなくモヤモヤする。
そう話していたところで「ガラッ」と引き戸の開く音がする。
木菟屋から、人が出てくるのが見えた。
「次回は色良いお返事を聞かせていただけると期待しています」
出てきたのはスーツ姿の男性だった。
「そう言われましても、急なお話なのでなかなか」
木菟屋の女将が何かを渋るような顔をする。
「もしかして、再開発の……?」
胡桃がつぶやく。
「江田さん。栗須さんからも言われていると思いますが再開発の話は口外していただきたくないので、忘れてください」
「誰にも言いませんけど、壱世さんも高梨さんもなんだか深刻じゃないですか? 市の再開発ってそんなに秘密にしなくちゃいけないんですか……?」
胡桃の質問に、高梨は気まずそうな顔をするだけで答えなかった。
家に帰ってからも、胡桃は高梨の表情を思い出してモヤモヤしていた。
「木菟屋から出てきた人、なんかどこかで見たことがある気がする……」
思わず声に出してつぶやく。
(市の職員てことだもん、市庁舎とかイベントで見たんだろうな)
それ自体に特段おかしいところは無いはずだ。
それなのに気になってしまうのは、やはり壱世と高梨の態度が原因だ。
壱世はあれから一度も再開発の話題を出さない。
(いくら婚約者だからって、私だってただの一市民に過ぎないから、市長としては正しいんだろうけど)
たまらなくモヤモヤする。